日本百名山を登り終えて [日本百名山を訪ねて]
日本百名山を全て登り終えた。
山に登り、すでに50年以上が過ぎた。
ここで 日本百名山へ登った足跡を辿ってみた。
山に登りはじめて丹沢や北アルプスに登り、自然の息吹に触れ、山の景観に圧倒された。
青空に白く輝く雪の峰を眺め、風雪に曝され山の厳しさを知り、
重い荷を背負い尾根を歩き、岩壁を攀じ登り、テントに寝て、助け合う仲間を知った。
そのうち、
仕事に追われる日々がつづき、何年もの間、岩や雪山からは離れてしまった。
年が過ぎ子供たちも家を離れ、また山へ登る余裕もでてきた。
昔の山仲間達とまた山に登りだしたが、岩を攀じ登る力や、風雪に耐える体力や気力は落ちていた。
山の仲間達には、年をとっても元気な人がいる。
もう歳だからとよく言っていたが、その人たちをみて、年だからと言うのは止めた。
そんな頃、登った日本百名山を数えてみると60をこえていた。
日本百名山はこれからの山行の良い目標となった。
日本百名山を登りながら、日本各地を訪れる楽しみもあった。
日本百名山を登り終えるのに50年余が過ぎたが、
登った日本百名山をあらためて顧みてみると、
そこには自分の山の歴史と想い出が詰まっていた。
日本百名山には、これからもまた登ってみたい山は多い。
百名山ではなくても、行ってみたい山も多い。
これからも山に登れたらいいなと思う。
日本百名山を登り終えて
平成27年春 記
山深くカールを抱く黒部五郎岳 日本百名山その100 [日本百名山を訪ねて]
ずっと昔、雲ノ平から黒部五郎岳を眺めたことがある。
それから40年ほど経った時、薬師岳を登ったあと、黒部五郎岳を目指したが、北ノ俣岳を過ぎたあたりで強い雨に降られ雷鳴を聞いて黒部五郎岳に至らず引き返したりしたことがあった。
それからまた何年か過ぎ、
梅雨が明けた暑い日、山の友達3人で黒部五郎岳をめざした。
新穂高から陽ざしの強い川沿いの道を歩き、わさび平の木立の中にテントを張る。
早朝、わさび平を発ち、小池新道を登り鏡平へ。
このコースは去年も水晶岳に登った時に辿った。
鏡平から急な登り、弓折分岐の稜線に出る。
森林限界を抜け、槍や穂高を望み、足元に咲く花を見ながら稜線を歩く。
双六小屋から巻道ルートを行く。
山腹を覆う残雪、
幾筋もの雪解けの流れ、山肌を飾る花々。
この山域に心ひかれる。
周囲を北アルプスの山々に囲まれた三俣山荘のテント場にテントを張る。
目前に聳える鷲羽岳を見ながらビール。
霧に包まれた朝、雨支度でテントを出る。
山腹を流れる霧。
霧は雨にかわり、回りの見えない長い下り。
黒部五郎小舎に立ち寄りコーヒーを頼み、雨を避け一息。
行く道、黒く霧にけむる岩、雨に濡れる花。
行くてにカールの白い残雪、
それを取り囲むように見え隠れし聳える岩壁。
カールの花の咲く急な側壁を登り稜線へでる。
岩の稜線を辿り、
黒部五郎岳山頂へ立つ。
霧でなにも見えず。
黒部五郎岳の山頂に立ち、日本百名山の全山登頂を達成した。
山に登りだして50年以上が過ぎた、今年は70の声を聴く。
これからも山に登れたらいいなと想う。行きたい山や登りたい岩場もある。
下りにかかると霧がとれ、
残雪を抱き聳える岩壁、カールの全容が姿をみせた。
山に囲まれた草原にたたずむ黒部五郎小舎、しばし休憩。
青空が広がり、
黒部五郎岳の姿を振り返り眺めながら三俣山荘のテント場に戻る。
黒部五郎岳の登頂と日本百名山達成を乾杯。
その夜は冷えた。
好天の朝、山肌に花の咲く三俣蓮華岳に登り、
昨日登ったカールを抱く黒部五郎岳や
黒部源流の山々、槍や穂高を眺めながら稜線を行く。
中道ルートをとり双六小屋へ下る、
帰る道は長く遠い、足を引きずり新穂高へもどる。
疲れた体で河原の露天風呂に入り、山の余韻に浸る。
日本百名山 その100 黒部五郎岳 平成26年7月27日
山奥深い 水晶岳 日本百名山 その99 [日本百名山を訪ねて]
暑い日が続いているとき、水晶岳を目指した。
新穂高温泉の駐車場に車を置き、川沿いの道を歩き、わさび平の木立の中にテントを張った。
早朝わさび平をたち、鏡平を経て弓折分岐へ、そこから花の咲く稜線を辿る。
雲間に槍が見え隠れする。
お花畑の先、はるかかなたに目指す水晶岳の姿を望む。
双六から巻道ルートを行く。
山肌に咲き乱れるお花畑、
幾く筋もの雪解けの流れ。
若いとき、この山を歩いたときの感動がよみがえる。
山々に囲まれた三俣山荘の天幕場にテントを張る。
何度かここにテントを張ったことがある。 冷たい雪解け水、流れの脇に咲く花、周りに聳える山々、記憶は今も消えはしないが、それからもう永い年月が過ぎた。ここへくるときは、あの頃のようにテントをはり、山の息吹に浸ってみたいと思っていたが、体力に自信がなく、何年も見送ってきた。
今、なんとかテントをここまで担ぎあげることができた。
霧の朝、黒部五郎岳へ向かう友達を見送ったあと、水晶岳を目指した。
流れに沿って咲く花々を見ながら黒部川の源流を辿る。
流れから離れ、尾根道を登る。
水晶小屋をを過ぎるとなだらかな稜線を歩く、いつしか霧もとれ、向かう水晶岳が黒い姿を見せる。
北アルプスの奥深くに聳える岩峰。
岩稜をひと登りで水晶岳の山頂。
今 その頂に立った。
周囲を取り囲む北アルプスの山々。
連なる山々の景観に圧倒されしばし見入る。
鷲羽岳を経て、槍ヶ岳や黒部源流の山々を望み、
三俣のテントに戻り、今登ってきた水晶岳あたりをあらためてながめたりした。
ほどなく 黒部五郎岳をめざした友達ももどった。
ビールが旨い。
翌日 三俣蓮華岳から双六岳を経て、新穂高に下り、温泉で山の汗を流した。
平成25年8月9日 水晶岳 日本百名山その99
北の海に浮かぶ 利尻山 日本百名山 その98 [日本百名山を訪ねて]
前日 礼文島の花畑を歩き、その後利尻島へ渡った。
登山ツアーに入り、利尻山をめざした。
北麓野営場から雨の樹林帯を登る。
木立が低くなり、吹き付ける風雨。
視界はなく、登るにつれより強さを増す風雨。
長官山附近で、ガイドは登るのをやめひきかえす事を促す。
ツアーでもあり、ガイドの指示に従わないつもりはないが、
とはいえ、ここで引き返す気にはならなかった。
登りたい気持を感じたのか、一部の人達はここで引き返すが、
残りの人達は山頂を目指すこととなった。
風と雨が吹きつけ、何も見えぬ山稜。
辿り着いた山頂。
せめて花でもと、覗きこむ斜面を雨が激しく吹き上げる。
山を下りた翌日
帰りの船から 利尻山が良く見えた。
船の上から いつまでもその姿を追った。
平成23年7月5日 利尻山 日本百名山 その98
夏 八甲田山 日本百名山 その97 [日本百名山を訪ねて]
遠い北の地にある、八甲田をいつか訪ねてみたいと思っていた。
暑い夏の日、八甲田をめざした。
酸ケ湯の駐車場に車を停める。
樹林帯の中を登り、硫黄のにおいのする沢を渡り、
アオモリトドマツの中を歩き
仙人岱の草原に着く。
清水が湧き、草原を流れる。
花の咲く草原を辿り
花の中の小さな池の縁を歩き
大岳を登る。
雲の湧き出してきた山頂。雲のあいまに八甲田の山なみをながめる。
大岳を下り、
上毛無岱の草原を歩く。
チングルマやキンコウカの花の盛りはもう過ぎていた。
急な樹林帯を下り、
下毛無岱の草原の中を辿り
酸ケ湯に戻る。
混浴の千人風呂で汗を流す。
樹氷の雪原、遠い昔の雪中遭難の出来事・・。
雪の八甲田にスキーををかついできてみたいが、
遠い・・。
*平成22年8月10日 日本百名山 その97
夏 岩手山 日本百名山 その96 [日本百名山を訪ねて]
いままで何度か岩手山を麓から眺めたことがある。
何年か前 岩手山の山麓をとおり八幡平へ向かった。
今年の春 岩木山からの帰り道 岩手山を眺めながら高速道路を走った。
H22 春
東北とはいえ夏の暑い日、岩手山をめざした。
山麓から 岩手山は雲にかすみ見えなかった。
馬返しの広い駐車場に着くと、樹林の上に岩手山が姿を現す。
樹林帯を一合目、二合目などの標示に励まされながら登る。
七合目を過ぎると展望がひらけ、岩手山を仰ぎみる。
潅木の中に咲く花を眺めながら
不動平を歩き。
火山礫の登りとなり、
もう咲き終わったコマクサ、
まだ咲き残るイワブクロなどをみながら、火口縁の山稜を辿り、
岩手山山頂薬師岳に着く。
しばし 山頂から火口と火口丘妙高山などを望む。
雲が多く 遠くはみることができなかった。
火口縁をくだり、そこここに咲く花や
古い社などをみながら火口原を辿り、
八合目にもどり冷たい清水で一息。
山麓にくだり振り返ってみたが、雲に覆われ 岩手山の姿はもう見えなかった。
*平成22年8月9日 岩手山 日本百名山その96
残雪の岩木山 日本百名山 その95 [日本百名山を訪ねて]
弘前城に桜が咲き乱れ
東北とはいえ暖かい日
花にはまだ早い林檎畑の向こうに 白い残雪に覆われた岩木山 を目指す
岩木山スカイラインを車で走り、八合目の駐車場へ
駐車場から 残雪の山腹をしばらく登り
リフトにのったかみさんと合流、リフト終点からは雪の消えた岩尾根を登る
残雪の山頂
山頂を目指す人達の多くはスキーを担ぎ、山頂付近から 白い残雪の斜面を山麓に向かって滑り降りていた。 山スキーはやったことがないし、そんな技術もないが、いつかスキーを担いで東北の残雪の山を訪ねてみたい。
雪の消えた山麓に
咲き始めた花達
岩木山は津軽の人たちの心の山なのだろう。
旭岳に登り雄大な大雪の山々を望み、お花畑を歩く 日本百名山その94 [日本百名山を訪ねて]
大雪山はずっと訪れてみたいと想っていた。
富良野や美瑛は深い朝霧がたちこめていたが、山道に入ると夏の青空が広がる。
ロープウエイをおりると、そこはもうお花畑、
噴煙をあげる旭岳が散在する池に姿を映す。
姿見ノ池のほとりをとおり、噴煙を望みながら火山礫の尾根をのぼる。草木はなくなり岩や砂礫ばかりの登りとなり、
大雪の山々やひろい高原が姿をあらわしてくる。
旭岳の頂上へ立つ。
連なる山々、はるかに続く高原、青くかすむ山波 雄大な大雪を目のあたりにした。
山々を眺めながら地図をなんどもひろげた。
頂上から砂礫でずるずる滑る急斜面を下り、
間宮岳や火口の縁を歩き
足元に咲く花をみて、
中岳温泉に下る。
いくつかの細い流れをわたり、
いたるところお花畑のひろがる裾合平を歩き、
花の盛りは過ぎてはいたが、まだ遅咲きの花々が咲く池のほとりを辿り、
ロープウエイ駅に戻る。
連なる山々やはるかな高原、一面咲き乱れる花々、雄大な大雪の一部に触れた。
高校生の時 初めて北アルプスにであった あの時に似た想いがした。
*平成21年8月11日 大雪山旭岳 日本百名山その94
噴煙の十勝岳と美瑛や富良野の丘 日本百名山 その93 [日本百名山を訪ねて]
濃い朝霧に包まれた富良野を走り、樹林の中の道に入り、
望岳台に着くと青空が広がる。
見上げる山から噴煙があがる。
火山礫を踏み 山を眺めながら登り、工事中の避難小屋をすぎるとやや急登、砂礫や岩の間に咲く花を見ながら登る。
昭和噴火口へのぼると、そこからは木も草もない 岩と砂の広大な火山原。
立ち昇る噴煙
その奥にめざす十勝岳をみる。
砂漠のような火山礫の路を歩き、岩の尾根を登り
南に富良野岳への山稜がのび、
2年程前トムラウシから残雪の十勝の山なみを望み、昨年 富良野の丘から眺めた十勝岳。
噴煙と火山礫に覆われた十勝岳に立つことができた。
*平成21年8月10日 十勝岳 日本百名山その93
山を下り。 美瑛や富良野の丘に立ち寄ってみた。
暑い夏の日
山陰に大山を訪ねる 日本百名山 その92 [日本百名山を訪ねて]
山陰の大山をめざし、早朝 家を発つ。
東名にのり 名神、中国道、米子道、山陰道を走り、いつか訪れたいと思っていた足立美術館に立ち寄る。
横山大観の絵画や魯山人の陶芸などの展示をみるが、やはり日本庭園に目を奪われる。
山陰の山里に こんな素晴らしい日本庭園が・・
来た道を戻り大山へ向かう。
食料を買い込み 雨のぱらつきだした 大山山麓の下山野営場でキャンプ。
曇り空の朝、下山野営場からすぐ夏山コース登山道となる。
昔日の大山寺隆盛の跡を残す石段を登る
芽吹きだしたブナの中を登り
潅木帯となると、残雪の北壁が望める
ダイセンキャラボクの群落を縫って 木道を歩き、頂上まじか
頂上附近の草原はまだ芽吹き前
頂上はあいにくの霧で展望はなかったが、霧の切れ間に剣が峰や険しい稜線が見え隠れし、霧の流れる荒々しい南壁の大崩壊をみる。
南から北から大崩壊が大山を削りとっているのを知り、 霧の山頂を後にする。
これから登る多くの人たちとすれ違う、子供達も多い、
今日は子供の日。
ほころびはじめた花をみながら下り
大山寺にお参りし
下山野営場の車へ戻り、雲りがちながら姿を見せる大山を振り返りながら、
出雲へ向かう。
出雲大社で いにしえの神に触れ
古代をさまよい
神話の息づく出雲を後に、
車で仮眠をしつつ 再び家路への長いドライブをし 山陰の旅を終える。
平成21年5月4日~6日 大山 日本百名山その92